チキチキバンバンでありたい私たち 〜大好きな『パリピ孔明』と「チキチキバンバン」によせて〜

最近、アニメ『パリピ孔明』にどハマりしている。

 

説明不要の天才軍師 諸葛孔明が現代の渋谷に転生し、駆け出しの歌手である月見英子と天下泰平(英子の歌を世に広め、平和な世界すること)を目指すお話なのだが、

 

まぁ、めちゃくちゃに面白い。

 

作品を貫くノリの良さだったり、孔明の何手先を見据えているのか分からないほどの計略が最高なのは勿論、様々な出会い・経験を通して、自分なりの音楽を見つけていく英子のサクセスストーリーとしても非常に見応えがあり、毎話毎話堪らないほどの充実感に満たされている。

 

そんな『パリピ孔明』の主題歌が今、めちゃくちゃにバズっている。

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タイトルは「チキチキバンバン」

 

ハンガリーの歌手であるJOLLYさんの楽曲「bulikirály」の令和空耳風アレンジとして、QUEENDOMというエイベックス所属のグループから選抜された女性歌手5名が歌い上げたパーティーチューンである。

 

この曲を初めて聞いた時、私はとんでもない脳汁の波動を感じた。

 

冒頭でのどかな田園風景を想起させる笛の音が響くやいなや、突然パーティー感を出してきやがり、「チャンチャン!逢 チキチキバンバン !」とか言う全くもって意味不明な言葉の羅列が脳みそに直撃してくる。

 

その後も、意味が通っているのか通っていないのかわからないような歌詞が続き、ヒロインが孔明の運転するアメ車のボンネットの上に座って風を感じていたり、どこか艶かしさを感じる渋谷の路地裏でキャラクターたちが奇妙なダンスを踊っていたりする、これまた意味のわからない映像をひたすらに見せつけられたのだ。

 

人間の脳は左脳の理性と右脳の感性をもとに総合的な判断を下す。

しかし、この曲はひたすら右脳に訴求し、人間を人間たらしめるはずの論理的な思考力をことごとく機能不全に陥らせ、ただひたすらに感覚的な気持ちよさを刺激するのである。

 

初めて聴いて以降、ひたすらにこの曲を聴き続け、現在では、電車に乗っていても、夕食のパスタを茹でている時も、トイレで気張っている時でさえこの曲のことを考えてしまうようになってしまった。

 

アニメの放送開始から早2ヶ月。多分1000回以上はこの曲を聴いている中で私は思った。

「さすがにこのままだとヤバイ。」

この状況を打破し、考える葦としての誇りを取り戻すとするためにも、少しでも理性的にこの曲を解釈していかなければならない。

 

前置きが長くなってしまったが、このような中毒を引き起こしてしまう孔明の計略から抜け出すためにも本題の方に入っていこうと思う。

 

 

原点にして頂点、パーティーキング・JOLLYと「bulikirály」

 

まずは「チキチキバンバン」の原曲である「bulikirály」とチキチキバンバン の総本山にして楽曲の主であるJOLLYさんについて調べていこう。

 

エイベックスの公式サイトによると

JOLLY(ジョリー)はハンガリーのブタペスト出身のアーティスト。 幼少の頃より音楽の英才教育を受け、1999年にグループの一員として歌手デビュー。デビュー・アルバム「どうしようもないほど君が好き」がハンガリーのゴールドディスクに選ばれる。その後もグループでアルバムを出しつつ、ソロ活動もスタート。パーティーチューンからバラードまで幅広くヒットを持っている。

とのことらしい。

 

私自身、ハンガリー語は全くの無知であるため、ハンガリーメディアの記事を探すことはできなかったが、どうやらパーティーソング一辺倒のアーティストというわけではないらしい。

 

では、この動画を見て欲しい。

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めちゃくちゃ上手いではないか。

 

ロケーション・佇まいなどパリピ要素を匂わせつつも、シンプルに歌がうますぎる。

「めっちゃ本格派シンガーじゃねえかよ!!!」

あまりの衝撃に、飲んでいたピルクル吹き出しそうになってしまった。

 

一番驚いたのは、一音一音がめちゃくちゃに心地よく、身体の中に染み渡っていくような感覚を得たことだ。

個人的な感覚の話にはなってしまうが、中東欧諸国の言語の響きには、どこか硬いような印象があった。(ゲルマン語派やスラブ語派の印象に引っ張られているせいで)

しかし、JOLLYさんの歌いあげるハンガリー語からは、どこか親しみのある柔らかい感じがする。

 

もともとハンガリー語(マジャル語)の起源は前述のゲルマン語派やスラブ語派とは異なる起源を持ち、周囲の国々とは一線を画した言語形態である。

なんなら、日本語との文法的な類似点もいくつか認められ、ハンガリー語と日本語は親戚筋なのではないかというくらい、ある種「中東欧らしさのない言語」というわけなのだ。

 

ハンガリー語についての詳しい情報はこちら↓

www.greelane.com

 

ja.wikipedia.org

cir.nii.ac.jp

いくつかの文献・サイト等を漁るなかで、特に興味深かったのが日本語とハンガリー語オノマトペに対する研究だ。

音韻についての専門的な言葉が乱立しているため、片手間で読むのには優しくないかもしれないが、「チキチキバンバン 」を聴きながら読んでみていただきたい。

 

少し話は逸れてしまったが、改めてJOLLYさんの「bulikirály」について書いていこうと思う。

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まずは楽曲名「bulikirály」について。

直訳すると「パーティーキング」という意味らしい。

趣もクソもない潔いまでのパリピタイトルである。マジでヤバすぎる。

 

肝心の歌詞についても「酒飲んで踊りまくって金ばらまいてお前らみんなゲットだぜ!」しか言っていない。これまたヤバすぎる。

 

散々脱線して、ハンガリー語の響きがなんだの、親しみがあるだの言っていた自分が恥ずかしくなるくらい清々しいまでのパリピソングである。これほどまでに突き抜けた最高な曲を必死に解釈しようとしていたなんて、自分は本当に無粋な人間である。

 

ここまでいろんなことを調べてみて、非常にありきたりな考えに帰着してしまったのだが、改めて自分がこの曲に惹かれている理由に気がついた。

 

激ヤバでマジ最高なパーティーチューンだからである。

 

歌詞の意味・音韻の理解なんかは正直どうでも良い。

ひたすらに聴いてる側が気持ちよくなって、頭空っぽに踊り狂いさえすれば良いのである。

 

QUEENDOM ver.の「チキチキバンバン」にも同じことが言える。

歌詞は基本空耳な上に意味不明。だけどもとにかく気持ちよくてブチ上がる。

これ以上、私たちは何が必要なものがあるのだろうか。

 

こんな世の中だからこそ大切にしたい「チキチキバンバン」

 

少し話は飛躍するが、現代社会に置いて今最も必要とされることこそ、この「チキチキバンバン」の精神なのかもしれない。

 

例えば「言語化」という言葉。自分の思考過程や意思を出来るだけ具体的に発信することの重要性を説く言葉として、現代社会で非常に幅を利かせている言葉である。

 

確かに、ある程度具体的な言葉をもってして自分の考えや事象を説明することは、仕事を円滑にしたり、自分の人となりをより知ってもらう上では大切なことである。

殊、リモートワークやオンライン授業などの環境が整い、肌感のあるコミュニケーションを取る機会が減ってきた現状では尚更であろう。

 

しかし、どうだろう。

全ての事象・感情・行動原理に言葉を尽くさなければいけない世の中が健全だと言えるだろうか。全てに理由付けをしなければ、相手に真意を汲み取ってもらえない世の中は、本当に生きやすい世の中なのだろうか。

 

私はそうではないと思うし、そうあってほしくないと思っている。

 

「なんかブチ上がるから最高!」とか「楽しそうだからやってみた!」とか最高じゃん。

逆に、よくわからないけど泣きたくなる時もあるし、苛立つこともある。それもまた一興じゃん。

 

高い焼肉はなんか美味いし、夜道を散歩するのはなんとなくエモい。

iPhoneの画面が急に明るくなるとなんかムカつくし、カップルYouTuberのvlogに至っては、なんか....めちゃくちゃ.....どうでも良い。

 

それを無理して説明しようとしたり、考えようとしすぎるのも良くない気がする。

なぜなら、よくわからないものはよくわからないからである。

 

ただ単純に、目の前で起きたことをなんとなくで楽しむ。

その雰囲気を他の人と楽しめることこそ、ある種人付き合いの理想形だと思うし、自分もそういう人間でありたいなと強く思った。

 

そう考えると、孔明の計略にまんまとハマり、頭の中がチキチキバンバン してしまっている自分は最高なのではないかと思う。

 

パリピ孔明』の作中で、孔明は英子の歌の力を信じ、彼女を引き上げることで、本気で争いのない泰平な世を目指そうとしている。

ならば、私たちもそれに乗っかり、全力でチキチキバンバンしていくしかないのではなかろうか。

 

あと少しでアニメ『パリピ孔明』は終わってしまうが、この様子だときっと2期も制作されるだろう。(ていうかしてほしい)

 

原作の方も、第9巻まで刊行されており、(2022年7月6日に第10巻が発売予定)

さらに面白さに拍車がかかってきている。

 

今後とも、孔明と英子の物語に注目しつつ、私自身もチキチキバンバンであり続けたいと思う。

 

追記

JOLLYはパスタが一番好きらしい。

そこは嘘でもテキーラとか言って欲しかった。

 

【関連リンク】

公式サイト

paripikoumei-anime.com

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abema.tv

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